回路を読もう 基礎講座 シリーズ

2013年10月12日 (土)

公開テスト 正解発表

皆さまお疲れ様でした。以下に正解を発表します。

1問5点、100点満点で採点をお願いいたします。75点以上で合格です。

回答に関して、納得できないなどのご意見がありましたらコメントでお願いいたします。

1(c)、2(c)、3(d)、4(d)、5(d)、6(b)、7(a)、8(d)、9(a)(c)(d)いずれでも正解、10(a)、11(d)、12(a)、13(c)、14(c)、15(c)、16(b)、17(d)、18(b)、19(b)、20(d)

真空管アンプ基礎講座 公開テスト

以下の設問に対して、正しいと思うものひとつに○を付けてください。

時間は20分です。

では始めてください。

1.真空管の中に電流が流れるのはなぜですか。

  a. ヒーターを熱すると電子が発生するから

 b. プレートに高電圧をかけるから

 c. aとbが正しい

 d. いずれも正しくない

2.5極管の電極構造で正しいのはどれですか。

 a. 真ん中にプレート、最外にカソード

 b. 真ん中にグリッドそのすぐ外側にカソード

 c. 真ん中カソード、順に外側にグリッドが3層、最外にプレート

 d. いずれも正しくない

3.R[Ω]の抵抗の両端にE[V]の電圧が掛かっています。流れる電流をI[A]とするとこの三者の関係は。

 a. R = E + I

 b.  R = E ÷ I

  c.  E =  I × R

 d. bとcが正しい

4.上記の法則をなんといいますか。

 a.  インコの法則

 b.  キルヒホッフの法則

 c. ヘビサイドの法則

 d. いずれでもない

5.真空管のプレートには交流電圧である信号の電圧もかかっているし、直流電圧もかかっています。混じり合っておかしくならないのは何故。

 a.  混じっているが人の耳にはわからない。

 b. 交流と直流は違うレーンを走っていると考えれば理解しやすい

 c. このことに触れている書籍はほとんどない

 d. bとcが正しい

6.真空管の中の電子の動きについて正しいのは

 a.  真っ先にグリッドから外の回路に出ようとする

 b. マイナス電荷を帯びているので、プレート側に移動しようとする

 c. ガラス管内を不規則にはねかえって動く

 d. いずれも正しくない

7. 出力管EL34の3番ピンは何の電極に接続されていますか。

 a.  プレート

 b. 接続はない

 c. スクリーングリッド

 d. ヒーター

8. 出力管EL34のソケットで高電圧がかかっているのは何番ピン。

 a.   7と2

 b. 3と6

 c. 4

 d. 3と4

9. 出力管の動作条件の種類は。

 a.  カソードバイアス

 b. ドン・バイアス

 c. 自己バイアス

 d. aとc

10.出力管のプッシュプル回路とは。

 a.  入力信号を+と-に分割してそれぞれの信号を別々の出力管で増幅

 b. 入力信号を+と-に分割せずにそのまま増幅

 c. アンプを構成する真空管を全部で2本だけで済ませた回路

 d. 上記のいずれでもない

11.アンプの電源回路に関して正しいのは。

 a.  PTの二次側の電圧を整流管で整流すると約1.2倍の電圧が出る

 b. ダイオード整流だと約1.4倍の電圧が出る

 c. その次のチョークでは直流抵抗分と流れる電流の積の電圧降下となる

 d. 上記すべてが正しい

12.B電圧から、各アンプの増幅段に電圧・電流を供給する回路は。

 a.  デ・カップリング回路

 b. カップリングコンデンサー

 c. Cカップ回路

 d. フェーズインバーター回路

13.抵抗R[Ω]に電流I[A]が流れたときの電力P[W]は。

 a.   R= I + P

 b. R= P ÷ I

 c. P= I × I × R

 d. いずれでもない

14.抵抗R[Ω]での消費電力がP[W]のとき、抵抗の規格は何Wが適当?

 a.  P[W]

 b. P×0.5[W]

 c. P× 5[W]

 d. P× 10[W]

15.電源トランスの電流容量の決定方法は。

 a. 200mAあればたいてい足りる

 b. タンゴのものを使えば何mAでもよい

 c. 最大出力時にすべての真空管に流れる電流の総和とする

 d. いずれでもない

16.アース線の処理で正しいのは

 a.  なるべくシヤーシへの接続点を多くする

 b. 各増幅段ごとに集約し、電源部あたりで1点アースするとよい

 c. 入力端子と電源回路のマイナス側を直結する

 d. 上記のいずれでもない

17.整流用のダイオードに関して正しいのは。

 a.  ゲルマニウムダイオードがよい

 b. ファーストリカバリーは商用電源に向かない

 c. 整流管はゼロリカバリーだ

 d. bとc

18.音のいいアンプを作るには

 a.  高価なビンテージトランス、真空管を使わなければならない

 b. 信頼されている複数の第三者が評価してくれれば、いい音と考えてよい

 c. 音がでれば、使っているうちに、やがていい音になる

 d. いい音の定義が決まっていないので、自分が好きならどんな音でもよい

19.真空管の品質について

 a.  品質より価格が優先されるべきだ

 b. 初期の性能を長く維持していることを、品質がよいという

 c. JANのマークが入っているものを買えば不良品はない

 d. ドイツ製が最高だ

20. パーツに関して正しいのは。

 a.  コンデンサーの中古は劣化の可能性が高い

 b. 電源トランスの中古で気をつけることは、絶縁紙の劣化である

 c. メーカーは供給責任をあまり感じていなく、ストックも必要だ

 d. 上記はすべて正しいと思われる場合もある

回答は明日以降です。

 

2013年9月23日 (月)

基礎講座訂正 ファーストリカバリー

みなさんこんにちは。

基礎講座は終了しましたが、私の師匠である(勝手に決めています)馬場清太郎様(CQ出版にアナログ関連の著書あり)から、ファーストリカバリーダイオードに関する説明が違っているとの指摘と、正しいご説明をいただきましたので原文のまま、以下に掲載いたします。

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貴blogの「2013年8月18日 (日)」で「ファーストリカバリー」のところですが、
説明が間違っています。
リカバリ・タイムは回復時間と言いますが、回復には順回復(フォワード・
リカバリ)と逆回復(リバース・リカバリ)があります。
blogの説明は順回復ですが、順回復は一般整流用もFRD(ファースト・
リカバリ・ダイオード)も同じ程度です。
何が速いのかと言えば、逆回復です。
逆回復時間とは、ダイオードに電流が流れている状況から逆電圧が
印加され電流が流れなくなるまでの時間です。
逆電圧が印加された瞬間にダイオードがどうなるのかと言えば、
短絡状態になります。
つまり逆回復期間中、ダイオードはずっとショートしているのと同じです。
高周波の整流回路では整流効率が悪化するため、FRDを使用します。
50/60Hzの商用周波数では整流効率の悪化もなく、FRDの使用は無意味です。
商用電源でのFRD使用は量産製品ではあまり見られませんが、これには
次のような理由もあります。
FRDは、一般的に順方向電圧が高くなり、逆方向耐圧が低下するだけでなく、
サージ電流耐量も低下します。
最近の商用電源には、サージ電圧が高頻度で観測されています。
サージ電圧が加わったときにFRDだと破損しやすくなります。
その点一般整流用だと、FRDと公称耐圧は同じでも実力値がかけ離れて
大きいため、破損することはほとんどありません。
つまり、機器の最も肝心な整流ダイオードに、わざわざ弱くてすぐ壊れる
ようなものを採用するのは、量産製品の設計者としては失格です。
アマチュアには無関係ですが、商品では高周波ノイズで他の機器に悪影響を
及ぼさないようノイズ規格があり、開発時にチェックしています。
一般整流用もFRDも逆回復時間にトランスのリーケージ・インダクタンスの
影響で、数10MHzのノイズがでる事があります。
その場合は、ダイオードにコンデンサを並列に入れるか、トランス巻き線間に
100Ω+0.1μF程度のCRスナバを入れて対策します。
最近はこういったゼロ・リカバリとゆうのも出ていますが、これは特性的に
素晴らしいです。
http://www.cree.com/Power/Products/1200V-Schottky-Diodes
ただし、商用電源での使用は、サージ電圧・電流対策を行っていない限り
薦められません。

なお、整流管では回復時間はなく、究極のゼロ・リカバリです。

馬場

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というわけで内容としては、1.商用電源にFRDを使うことは意味がない。汎用品でもOK。今までFRDでなければだめだと、決めつけていましたが無意味だったのですね。まとめ買いした@5の汎用1N4007で十分だということです。

2.FRDは電子が半導体の中を移動するため回復時間がかかるが、整流管では真空中を電子が飛ぶために、ゼロ・リカバリであるとのことです。球はすごいですね。

専門の方のご意見は本当にためになります。間違った情報を伝えてしまって申し訳ありませんでした。お詫びして訂正いたします。

 なお、馬場様からは著作にある記事の「低歪率状態変数型発振器の回路」を本ブログに公開(一部変更を入れます)してもよいとの許可をいただきましたので、私の制作した発振器50Cの詳しい製作記事を近いうちに掲載する予定です。

お楽しみに。

2013年9月15日 (日)

回路を読もう 基礎講座⑨ 抵抗の規格値

みなさん、今日は抵抗の規格値=消費電力の話です。

10KΩ1/4Wの小さな抵抗に電流20mAを流すとどうなりますでしょうか。

この抵抗での消費電力はW=電流×電流×抵抗値ですから、

(20×0.001)×(20×0.001)×(10×1000)=4W となります。

1/4Wの16倍の電力消費ですから、SWオンと同時に抵抗に煙が発生して焼き切れてしまいます。

抵抗は適宜の耐電力の規格値を選ぶ必要があります。上記の場合4Wですから10Wもしくは余裕をみて20Wのものを選ぶことになります。

この場合、そこまでの規格の抵抗はセメント抵抗かホーロー抵抗になると思います。

私は抵抗の規格は実際の消費電力の3倍から5倍くらいの範囲で適当なものを選んでいます。

例えば、アンプの初段のカソードに入る1KΩの抵抗。ここは電流は0.8mA程度のなので、実際の消費電力は0.00064Wです。よってここは1/8W=0.125Wでも十分だと言えます。

半固定抵抗の場合。固定バイアス用の半固定抵抗は殆ど電流が流れませんので、通常のRV24タイプで十分です。300Bなどのフィラメントに接続されるハムバランサー用の場合。たとえば100Ωならここにはカソード電流80mA程度が流れると考えれば、計算によりこの抵抗器のは0.64Wが消費されています。余裕をみて2W以上のものでよいと思います。

今後アンプを組み立てた場合は、各部の直流電圧を測定し、回路図に記録しておきましょう。電圧が分かればそのとき各部の抵抗器の消費電力が計算できます。規格値ぎりぎりの場合は抵抗も熱くなっていますので、大きめの規格のものに取り換えてやりましょう。

みなさん、今回で基礎講座はいったん終了とします。

9回実施しましたがご理解いただけましたでしょうか。ご質問があればいつでもお尋ねください。私の分かる範囲で回答させていただきます。

またアンプ製作上のノウハウは過去の製作記事の中に書いています。今一度ご確認ください。

特に「アンプの作り方」のカテゴリーの6RA8PP、OY36・KT88アンプ、大型アンプ、アメリカサウンドアンプ、パラPPアンプをもういちどお読みください。レイアウト決定、加工、配線などで参考になる部分があるかもしれません。

 今までの理解をかねて、近いうちにテストを実施します。後から回答を発表しますので自己採点をお願いいたします。

お疲れ様でした。

 

2013年9月13日 (金)

基礎講座⑧への質問

基礎講座⑧に関して質問をうけました。

質問

「お世話になります。「自己バイアス回路はグリッド電圧は0だがカソード電圧が入力信号の増大にともない変動する」
このことは回路図では表記できないのでしょうか。
0だが変動する、マイナス電源、なかなか理解難しいです。」

回答

出力管を自己バイアス回路で使う場合と、固定バイアス回路で使う場合の2通りが存在することをまず理解してください。

 回路図では、電圧配分や電流値は、アイドリング状態(入力信号なし)のものを記載するのが一般的です。動作中にいくらになるという表記もしません。(これは自己バイアスでも固定バイアスでも)。

 実は真空管の動作状態を表すものが回路図とは別にあります。それらは動作特性というグラフで、真空管の規格表に付随しているのです。内容はバイアス電圧がそれぞれマイナス○○Vのときに、プレート電圧に対するプレート電流の変化をグラフにしたものです。その特性を確認して自分のアンプの動作点(動作条件)を決めた上で回路を考え回路図を書く、という流れになります。

 今回の講座では、そのグラフや真空管の動作に関しての説明は、あえて言及していません。私では力不足であり、話が広がってしまい本1冊分になるからです。

 動作特性に関して詳しく知りたければ、木村哲氏の著書「情熱の真空管アンプ」の2章あたりを参照ください。

規格表と「情熱の真空管アンプ」です。

Img_1341


規格表は結構高価です。購入されなくても以前この講座でご紹介したフランクの真空管規格のHPを利用されても結構です。すべて英語やドイツ語、フランス語ですが。

この基礎講座は「情熱の真空管アンプ」などの著書を読む前段階での基礎知識の習得を目指しています。いわば講座を修了すると、なんとかこれらの著書を理解できるレベルになっている、とお考えください。

     それから固定バイアス用のマイナス電源(=C電源)は、電源トランスの二次側に出ている70V程度の巻線を利用して作ります。この巻線がない電源トランスもあります(=自己バイアス動作でいくしかない)。電源トランスのカタログをずっとみていくと、二次側にこの巻線があるもの、ないものが分かってきます。固定バイアスでいくなら、巻線のあるトランスを選ぶ必要があるということです。

Img_1172

これはシングルアンプの2チャンネル分の固定バイアス回路(=マイナス電源=Ⅽ電源)です。CL、CRの端子から出力管のグリッドへマイナス電圧を供給します。この回路では10KΩの可変抵抗を動かすことで、グリッドへのマイナスの供給電圧が可変できて、これにより出力管のアイドリング電流が調整できるしくみになっています。

固定バイアスの動作条件を変えたいとき、または出力管を違う球に取り替えたいときに、この調整機能が役に立ちます。

以上です。ご理解いただけましたでしょうか。

2013年9月11日 (水)

回路を読もう 基礎講座⑧ 真空管はカソード電圧が基準

真空管の動作電圧でまだ説明していないことがありました。

プレート電圧、SG電圧などの定義です。

1.真空管の各電極の電圧は、カソードの電位を基準とします。

  例として、以下の回路図のEL34の上側の電位に注目してください。

Img_1324_3

回路は自己バイアス回路です。カソード電圧は22.5Vになっています。プレートには378Vがかかっています。

カソードを基準ですから実際のプレート電圧は378-22.5=355.5Vになります。

一方のグリッド電圧ですが、回路図では0Vです。しかしながらカソードを基準にするとー22.5Vになるわけです。

固定バイアス回路で考えますと、カソードを0Vとして、グリッドには実際にー22.5Vをかけます。プレート電圧は355.5Vをかければ自己バイアスと同じ条件になるわけです。

よって言えることは、同じ条件でも自己バイアス回路ではカソード電圧+プレート実効電圧の和をプレートにかけなければならないということです。

ここで固定バイアスと自己バイアス回路の違いを説明します。

1.固定バイアス回路は、グリッド電圧が常に一定であり、真空管に大きな電流をながすことができる。よって出力も大きく取れる。ただし固定バイアス用のマイナス電源が必要となる。音はスピード感が出る(私見です)。

2.自己バイアス回路はグリッド電圧は0だがカソード電圧が入力信号の増大にともない変動する。それにより出力は固定バイアスほど大きくならない。ただし回路は抵抗とコンデンサーを接続すれば済むので簡単である。プレートへの供給電圧は高くなる。音は固定バイアスよりは落ち着く。

以上となります。固定バイアスは何かのトラブルでマイナスのバイアス電圧が供給できなくなり、グリッド電圧が高くなってしまうと、過大電流が流れ真空管をダメにしてしまうリスクはあります。

よって直熱三極管の高価なビンテージ品はシングルでも、PPでも自己バイアスを採用することが多いのです。

私はPP回路が多く、大きな出力アンプでは固定バイアスを採用することが多いのです。理由は音が好きだからです。

2013年9月 7日 (土)

基礎講座⑦への質問

受講者の方から、ダイオードと整流管による違いのメリット、デメリットを教えてくださいとの質問を受けました。

これだという決定的な正解はないと思いますが私なりの見解を述べさせていただきます。

整流管によるメリット:真空管らしい音、弦楽器などに潤いがでてくる。中高域が伸びる。整流管の差し替えにより音の変化が楽しめる。デザイン的にうまくバランスをとると見た目が美しくなる。

整流管のデメリット:寿命がある、よってストックが必要(お金がかかる)。高価である@1000程度から上は数万円。ヒーターの電力が余分に必要(電気代がかかる)。他の部品に熱履歴を与えてしまうことがある・置き場に困る(コンデンサーの近くなど)。とりつけにソケットが必要。シャーシーに30mmの穴加工が必要。シャーシー上が狭くなる。

ダイオードによるメリット:現行品なら安い@5~@400程度。半永久的に壊れない(使っていて壊れた経験がない)。小さいため実装に場所をとらない(シャーシー天板がゆったり使える)。高い電圧が得られる(整流管にくらべ)。大きな電流が得られる。

ダイオードによるデメリット:金属ケース入りなら感電するリスクがある。需要が少ないためメーカーがすぐに製造中止にする可能性がある(買いだめが必要か)。整流管にくらべ音にやや潤いが少ないか?(その音がいいという人もいる)。プラスとマイナスが紛らわしいものもあり、実装時トラブル発生のリスクあり。

ざっとあげれば以上ですが、実際のところは8:2の割合でダイードを使っています。それぞれのデメリットにも極端に困らされたことはありません。ただ整流管をどこに配置するかで、悩むことはあります。結果ブロックコンデンサーをシャーシー上から追放しています。しかしながら熱が加わったコンデンサーの寿命がどれくらい縮むかも把握していないのです。

どちらか一方にすべきだということもないと思っています。一長一短です。

回路を読もう 基礎講座⑦ アンプの出力と電源回路の決め方

みなさんこんにちは。今日はアンプの出力から電源回路・電源トランスの大きさを決めていく方法を説明します。

オークションを見ていると100W+100Wのアンプと表示しているのに、あんなに小さい電源トランス(PT:POWER TRANSFORMER)で大丈夫なの?と疑問に思うことがあります。

きっとどこかの部分の情報が正しくないのでしょう。でかい出力のアンプなら、PTも6KG以上の鉄の塊であるはずです。(特殊な回路技術を使っていなければ)。

1. アンプの出力と電源トランスの容量

 一般的にPTの2次側の高圧巻き線の電流容量はいくらあればよいのかを考えます。これは結論から言いますと、最大出力(例:1KHzの信号で歪率5%)時に、すべての真空管に流れる電流の合計が賄えればOKです。

EL34のB級PP(固定バイアス回路)という動作条件を規格表から引っ張り出しますと、

 プレート電圧475V、SG電圧400V、第一グリッド電圧―35Vのときに、最大出力70W。このときプレート電流は2本×125mA、SG電流は2本×25mAです。

つまり片チャンネルのEL34の2本に300mA流れています。初段や前段に片チャンネル合計10mA程度と考えると、両チャンネル総電流は620mAとなります。よってPTの2次側高圧巻線の直流電流は、620mA取り出せれば、両チャンネル動作70W+70Wが実現できるということ。

質問です。もし400mAの電流容量しかないPTを使うと出力は70W+70W確保できるでしょうか。

答え 最大出力時の電流が取り出せないのなら出力は40W~50W程度に低下する。

タンゴやノグチのPTの型番は、電流容量が型番になっているものが多いのです。ST350やMS450DRなどです。

2.プレート電圧からPTの二次側高圧巻き線の端子電圧をえらぶ方法。

上記のEL34のB級とは別の条件で話をします。図はダイオード(1500V1A程度)によるブリッジ整流回路です。

Img_1332

PTの電流容量が十分に足りているとき、二次側端子電圧が300Vなら、整流後すぐの電圧は約1.4倍になります。ここでは420V。もしアンプがアイドリング状態(信号が入力されていない状態)で両チャンネルトータルで200mAが流れていれば、チョークコイルではその直流抵抗分(ここでは55Ω)の電圧が降下します。よってB電圧は420-(55×0.2)=409V。

409Vはそのまま出力管のPにはかかりません。出力トランスの一時側のB端子に印加され、中の巻き線を通ってP端子にでますので、OPTの直流抵抗により数ボルト降下します。5V前後くらいと考えてよいと思います。

よってプレート電圧は404V程度になります。チョークコイルの内部直流抵抗もありますがプレート電圧はPTの端子電圧の1.25から1.3倍になると考えておけば良いと思います。

言い換えればプレート電圧、アイドリング電流、チョークの抵抗値がわかれば、逆算してPTの端子電圧が計算でもとめられるということです。

次に整流管を使用して直流電源を得る場合を考えます。

Img_1331

両波整流になりますので巻き線はセンタータップ方式であることが必要です。この場合は整流後すぐの電圧が、ダイオードより低くなります。

5AR4でPTの端子電圧の1.25倍程度。ここでは375V程度です。以下同様にチョークやOPTを考慮すればプレート電圧が求められます。

整流管は実はたくさん種類があります。ヒーター電圧は5Vが一般的ですが、電流は2Aや3Aのものがあります。もちろん3Aの方が取り出せる電圧や電流が大きくなる傾向があります。

旧い整流管は取り出せる電圧が5AR4の1.25倍に対し1.1倍程度と低いものがあります。また電流も5AR4の250mA程度に対し150mAにとどまる物もあります。どの整流管が何倍かというデータを取っておくと、後々便利です。挿し替えにより電圧値が調整できるからです。

また、整流管を出てすぐの平滑用の電解コンデンサーの容量にも制約があります。5AR4は47μFまでOKですが、旧いものは10μF以下で使用するように指定があります。

旧い整流管に大きな容量のコンデンサーを接続すると寿命が短くなると言われています。

整流管の規格書をみると取り出せる電圧、電流をグラフ化しています。参考にされるとよいと思います。2Aで結構な電流がとれる5AR4の優秀さがわかります。

一度規格表で整流管の種類と特性を確認してみてください。80、5U4GB,5R4G,5V4G,5T4、WE422,WE274、GZ37、5Z3まだまだたくさんあります。接続が同じで同程度の整流管を挿し替えて、音の違いを楽しむこともできます。これも球アンプならではです。

ちなみに、両派整流でも整流管の代わりにダイオード(1500V1A程度)を使うと1.4倍の電圧が出ます。

今日はここまでです。

まとめ

1.プレート電圧はPTの端子電圧と整流方式で決まる。

2.整流管により、取り出せる電圧・電流の制約がある。

3.PTの二次側電流容量は、最大出力時の全電流が確保できればベストで ある。

2013年9月 4日 (水)

回路を読もう 基礎講座⑥ 直流回路の抵抗とコンデンサー

みなさんこんにちは。前回までの講座でわからないことがあれば、遠慮なく質問をお願いいたします。

とくに回路図と実際の配線の相関さえ分かれば、動作や理論がわからなくても、アンプの製作はできます。ここは必ず理解してクリアしてください。

さて、どんどん進めていきます。もう2・3回で終了しようと考えています。

今日は電源供給点から、増幅回路までに存在する、抵抗とコンデンサーの役目、はたらきの説明です。

回路図を見てください。EL34PPを出力段としたリーク・ミュラード回路(初段と位相反転段の回路構成の名前)です。片チャンネルだけで考えます。

Img_1324

(写真はクリックで拡大されます)

電源回路からB1のところに、385Vが供給されています。

B1から出ていく電流に注目します。OPTのB端子に向かって173mAが流れています。音声信号が流れていないアイドリング状態とお考えください。音声信号が流れると電流はこれより増えます。

この173mAは上下のEL34に半分ずつ流れ込みます。P1とSG1からと、下はP2とSG2から流れていくのです。

B1からはさらにB2に向かって5mAが流れていきます。このB2からも同様に6CG7の上下のユニットのプレートに4mAが、さらにはB3に向かって1mAが流れていきます。

ここでルールがあります。

①1点に流れ込む電流はそこから出ていく電流の和に等しいということ。

②電位の違う2点の電位の差はそこに流れる電流と抵抗値の積に等しいということ。これはオームの法則 E=I×R そのものです。

これでわかることは、抵抗の役目は、その値を適宜選べば欲しい電圧を作ることができるということです。

B1が385Vで位相反転段には4mAが流れて(通常位相反転段はプレート負荷抵抗には2~3mA程度です)いくし、初段の12AT7には1mA程度(あるいはそれ以下)が流れるので、B1からB2には約5mAが流れるのです。これは実際にそのくらいの値が流れます。

位相反転段の6CG7への供給電圧を280Vにしたければ、R1は(385V-280V)÷5mA=21KΩとなります。この抵抗を実装すればよいわけです。

同様にB2からB3へ1mA流れるので、B3での初段への供給電圧を170Vにしたければ、R2は約100KΩになるということです。

こうやって抵抗値を決めていくのです。

ここで6CG7のプレート電圧や12AT7のプレート電圧がそれぞれ①236Vと②70Vになるのはわかりますか。これもオームの法則で計算すればよいのです。

それぞれのプレートの負荷抵抗と電流を乗じて、供給電圧から引いてやればプレート電圧が計算できます。

設計の時は実は①と②の電圧を先に決めておきます。次にプレート負荷抵抗と流れる電流からB2の電圧(280V)やB3の電圧(170V)を計算しておいて、その次にR2,R1の抵抗値を決めるという順序になります。

さらに突っ込んだ話をします。真空管のGあるいはG1には直流が流れないという前提で考えます。EL34の上下2本には173mAが流れています。これらはそのまま2つのカソードを結んだ点から、共通の自己バイアス抵抗130Ωにそのまま流れ込んでいきます。よってカソード電位はオームの法則により173mA×130Ω=22.5Vになります。

6CG7のカソード電位72Vも同じ計算方法で求められるのです。

このB1,B2,B3の間の抵抗R1,R2とB2、B3からアースされている電解コンデンサー2個からなる回路をデカップリング回路(安定化電源回路)と呼びます。

抵抗の役割は理解されましたね。ではこの電解コンデンサーの役割ですが、これは電源の安定化です。例としてB2点に入ってくる5mAが瞬間的に少なくなったと仮定します。ところが電解コンデンサーはバケツのように電荷を蓄えていますから、電流が不足しても電荷がそれを補ってくれます。

これが電解コンデンサーの役割です。

それからカップリングコンデンサーと呼ばれる0.1μFが6CG7のPからEL34のGに向かって接続されています。このコンデンサーは直流を通しませんから6CG7側は236Vですが、EL34のG側は0電位になります。この役割も覚えておいてください。

今日のまとめ

・初段、位相反転段の各真空管のプレート電圧をきめたら、電流と負荷抵抗からデカップリング回路の各ポイントの電圧と抵抗値を計算できるようになること。

・初段管(12AX7、12AT7、EF86(三接)など)のプレート負荷抵抗は100KΩと決めておくとよい。電流は0.7mA~1.0mAとなる。

・位相反転段のプレート負荷抵抗は22KΩ、33KΩ、47KΩ等が一般的。電流は2mA~3mAとなる。B2の電圧が高ければプレート負荷抵抗での電圧降下を大きくするために47KΩを採用するなど、調整すること。

少しやっかいですが、基本はオームの法則と四則演算だけです。よく咀嚼して理解してください。

リーク・ミュラード型の回路はもう基本の形が決まっています。世の中のたくさんの作例、回路をみてプレート抵抗や電圧配分を確認してみてください。だいたいパターンがわかってきます。回路が頭に入ると、B1やB2、B3はこのラグ端子だとか、配線しながら次はこのピンにこの抵抗をつなげばよいと、自然に浮かんできます。

「el34pp.docx」をダウンロード

 

基礎講座⑤への質問

読者の方から以下の質問をいただきました。

「この講座で説明した1点アースと2点アース(リップルを含んだ電源系で1ポイントアース、これとは独立させて回路系でまとめて入力端子のところで1ポイントアースする2点アース方法)のそれぞれのメリット、デメリットを教えて欲しい」

上記のような別系統ごとの2点アースを私は実施したことがないのです。なにしろ1点アースで残留ノイズ0.1mV以下を実現した経験以降、1点アースの専門家になってしまったので。

自分なりに2点アースの別系統に関して考えたのですが疑問が生じました。

初段管のプレートに電源を供給している、デカップリング回路の電解コンデンサーのマイナス側はリップル系なのか、増幅回路系にいれるのか。

ライターの長真弓さんの著作には増幅回路系と考えるべきだとありました。さらにネットで調べると同じくMJライターの松並さんのHPでこの2点アース方式をときどき採用することがあると、記載してありました。松並氏はCバイアス回路のマイナスもデカップリング回路のマイナスもリップル系としてまとめる旨の記載がありました。

松並氏はときどきこの2点アース方式を採用されるそうです。おそらく氏のことですから残留ノイズは1mV以下は実現されているはずです。

私はこの2点アース方式ではリップル分がシャーシ内に拡大して、入力付近の回路系のアースポイントに干渉するのではないかと疑問に思っていたのですが、この推測はただの危惧に終わったようです。

よってメリットは2者同等。作業上のデメリットは2点アースの方がシャーシーへの接続点が一カ所多く少し手間、くらいでしょうか。

以降質問される方は、もしご自分でテストできる環境であるなら是非トライされてください。その結果を報告いただけるととても助かります。

得られた情報はストックすることが目的ではなく、実際にそうなのか検証することを第一目的とされるとよいと思います。

2017年8月
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