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2016年2月28日 (日)

トライオード

今から四半世紀前のこと。

当時私は、結婚したばかりで、住み慣れた大阪から関東の川崎に転勤して暮らしていました。

誰しもあることですが、仕事の内容、人間関係に悩み、当時真剣に転職を考えたことがありました。

オーディオの道で食べていければと思い、何社か採用試験を受けました。

1件目はボーズ。そうあのアコースティスマス(低音増強)理論で世間を席巻していた外資系のスピーカーメーカーでした。新聞に求人を出していました。面接の日は渋谷まででかけました。

英語の試験問題が出ました。記憶では次の日本語を英語に直せという問題で

「緊急の用事ができて、銀行の普通口座から、○○ドルを下す必要が生じた」とか何とかいう問題でした。

試験後に面接があり、品質管理の仕事はできるか、と問われました。そのとき「はい」と答えておけば転職していたかもしれません。頭の中で毎日、外注工場から納入されるスピーカーユニットの検査やデータ集計に追われ、工場の中で立ち働く自分を想像してしまいました。

それはそれで、責任を伴った、やりがいのある仕事ですが、当時工場勤務の経験が何年かあった私は、また工場で働くのかと少し落胆し、素直に返事をしませんでした。

結果は不採用。

そして、オーデイオ関連のガレージメーカーに何社か、手紙と経歴書を送りました。募集があったわけではなく、自分から交渉する形でした。

当時の名前が「トライオードサプライジャパン(現在のトライオード)」という会社と、ラックスOBが立ち上げた「エアータイト」の2社でした。

 「トライオードサプライジャパン」から返事がきました。社長直筆でした。この業界は決して楽じゃないことが連綿と綴られていました。私は読んでいくうちに山崎社長の優しさ、人柄に心を打たれたのです。内容的には採用は無理で、現職で頑張りなさいというものでした。

もう1社の「エアータイト」は、なしのつぶてでした。忙しくてそんな手紙には構ってられない、というところだったのでしょうか。

なぜこの2社に連絡を取ったのか。トライオードの方は、実はそこから購入した英国製の高価な出力管が、購入後数カ月経って、実機に挿してみたところフィラメントが点灯しなかったのです。そこで私は現品と手紙を添えて送り、とても残念で、できれば良品と交換して欲しい旨伝えたのです。

 すると店主はきちんと良品を送り返してくれたのです。私はその対応に感動して転職を考えたときに、この人と一緒に働きたいと考えたのです。

エアータイトは、当時の製品が魅力的で、この製品群を売り込むためなら世界中駆け回ってもいいと思ったから。でもなんの連絡もなしでした。

他にもオーディオ雑誌に広告を出している会社に何社か電話してみました。いずれもこの世界は厳しくて毎日が食うや食わずだとの内容だったと思います。

 今思えば、トライオードの山崎社長はお一人で、中国に部品調達の活路を見出し、安価で品質の良い、デザインの素敵な製品群の販売に成功されています。おそらく単身で努力されたのだと思います。人を雇うとか、人に頼ることが、経営的にも業務の効率的にもメリットはなかったのでしょう。

 私は過去の一連の転職活動の中で、山崎社長とのやりとりが一番、自分のためになったと思っています。

その後10年経って脱サラし、全く自分一人で仕事をするようになって、毎月、毎年の業績に一喜一憂している状況で、人を雇い入れることの難しさを実感しています。当時の方々の対応が身に染みて分かるのです。

 さてみなさん、もしアンプを購入されるならトライオードのTRVナンバーの製品をご検討下さい。人にやさしい方が開発したアンプなら、基本的に手は抜いてないと思うのです。

それからエアータイト。なしのつぶてのブランドA&M。なにも恨みはありません。ただ自作のPPアンプを作るときには、この会社の製品ATM-2には絶対負けたくないと、今でも思っています。この前オークションに出品したKT88PPアンプも実はそうなのです。

 

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コメント

オッカイポさん、コメントありがとうございます。ラジオデパートの太平洋が閉店して久しいですね。羽龍さんとは店頭で、何度かお話ししたことがあります。大飯ぐらいの球ほどいい音がするんですよ、とか。浅野さんのアンプの写真がガラスケースの上に飾ってありました。
 二度癌を患ったとお聞きしたことがあります。現在はどうされているのでしょうか。
 人に優しい、誠実に接するということは大切なことですね。政治家を先頭に、それを忘れている人たちが増えているような気がします。
 私も消えていったあとに、誠実だったと言ってもらえるように、余生を送りたいと思います。

こんばんは。

以前、私も山崎さんに真空管の事で質問をしたことがあり、誠実さを感じた事があります。また、太平洋の店主(確かハリュウというお名前だったような)にも同様な誠実さを感じました。先達には到底及びませんが、私も亡くなってから思い出してもらえるような人生を送りたいと思います。

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